あと半世紀どう生きる?

半世紀どうにか生きてきたが、これからの半世紀を模索する。

30年前の漫画「沈黙の艦隊」の衝撃! 今の日本と隣国を描いている?

今週のお題「好きな漫画」

沈黙の艦隊」 かわぐちかいじ

当時(1988年頃)、日本の自衛隊がそこまで、日本人左派に嫌われているとは思っていなかった。私は東北の片田舎で、共産党の支持の地盤だが、自衛隊自体は、尊敬の位置づけにあったと思う。

現に私の叔父さん2人は、定年まで自衛官を勤めあげたし、私の父も4年ほど自衛官で、退官後も予備自衛官をやっていて、小さいころの私は、自衛隊に何の違和感もなかった。私も1年半ほどその関係に所属したこともある。家には、よく父が自衛隊の非常食の缶詰や乾パンなどを持って帰っていた。私もよく食べた。

 

ちょっとした違和感は、高校生ぐらいからあった。こちらから攻撃をできないのは、大丈夫なのか?とか、あとは税金泥棒的なことを言われること。当時は、攻撃どころか、威嚇射撃もニュースになるぐらいだったから変なご時世だったと思う。

 

今でも自衛隊論議憲法改正論議は、正面(まとも)とは思えない。

太平洋戦争を負けた痛手は、かなり大きいと思う。

自分は、ただの庶民、なんの政治や歴史も勉強していないが、常識的にこれらに関しては変だと思う。戦争の痛みを受けていないせいだろうか?

 

とにかくそんな感覚の高校生だったが、卒業後関東に出てきて、自衛官に対しての、さらなる大きな非難を左派と思われる人々から聞いた。そして自衛隊の日本における本当の立場を知ることとなった。そんな時に週刊モーニングで連載されたのが「沈黙の艦隊かわぐちかいじ氏の作品である。最近では、実写映画化された「空母いぶき」という作品も話題になった。軍事物は、かわぐち氏の得意とするところである。

 

この中で、興味を引いたのが、潜水艦同士の戦い。見えない相手とどう戦うか?全く自分の想像出来ない世界なので、とても面白かった。

 

潜水艦は、海の中の戦いで自分の航行音まで消し、相手に近づき、あるいは相手を近づけさせ相手を撃退する。つまり攻撃兵器だけでなく、艦全体、海流の動き、戦域の地形、そしてなによりも音を利用して作戦を遂行する。その探り合い、思考、作戦の組み立てなど、全てが自分にとって新鮮で且つダイナミックに展開するので、終始ワクワクドキドキだった。

 

また当時の政治状況、世界情勢、日本のこれまでの立場などが織り込まれ、時事ネタ好きの私にとって、作品の示す政治的見解にとても興味が引かれた。戦闘シーンだけでなくそういった所も私がのめり込む理由である。ネタばれとなってしまうが、(以後気になる方は、読まないで下さい)



潜水艦の名前が「やまと」そして、その艦が独立国家として独立を宣言するという斬新なストーリー。毎週、週刊「モーニング」を買わないわけにはいかなかった。後半は、ちょっと飽きてきたのか立ち読みで済ますことも多かったが。(笑、ごめんなさい)

 

スタート当初の1988年昭和63年は、昭和天皇崩御の前の年、ソ連がまだ存在、ゴルバチョフ書記長がペレストロイカ(政治改革運動)をはじめた年、台湾では、蒋経国総統が死去、「李登輝」氏が後任となった年。湾岸戦争と言えばジョージ・ブッシュ米国大統領だが、この年の就任である。歴史の転換点が始まろうとするような年に「沈黙の艦隊」は始まったのである。

 

さて「沈黙の艦隊」は、英語の「The silent service (潜水艦部隊)」からきているいと思うが、その後に映画でスティーブン・セガール主演の沈黙シリーズが始まる。「沈黙の艦隊」とは全く関係ない。私は、その命名が間違いなく「沈黙の艦隊」からのパクリだと思っていた。今ではセガール沈黙シリーズのほうが多いし有名なので、「沈黙の艦隊」もセガールの映画?と思ってしまう人もいるのではないかと心配する。かなり余談だが。

 

また当時、日本では禁句であった核武装にも踏み込んで描かれていて、核の本質をついた展開が存在する。また今はあまりにも政治的に弱い立場の現実の日本だが、漫画の中の潜水艦「やまと」は核武装しているかもしれないという憶測だけで、アメリカを恐怖させている。まるで今の北朝鮮を想像させる。日本のアニメが好きと噂されていた、北の指導者もこの漫画あるいはアニメを見ていたかもしれない。現実の国際政治は、軍事力が背景にあるのは隠せない。

 

「やまと」と言えば、太平洋戦争を知る人にとっては、戦艦「大和」だが、私の世代は、アニメ宇宙戦艦「ヤマト」である。その後に登場した漫画の中の原子力潜水艦独立国家「やまと」。「やまと」という言葉に注目したい。歴史的に「日本」とこの国が呼ばれる前は、「大和」と呼ばれたと言われる。また「大和魂」と言えば、私は日本の心意気と感じる。そして沈黙もまた日本の美学である。外国人に対して沈黙は良くないし、理解されないが、日本人同士であれば、「何も言わなくてもわかる。」聞こえなくても見なくてもわかるが日本流である。

 

そして何も聞こえなくても、相手艦隊を確実に撃沈する「沈黙の艦隊」は、正に日本流。

 

噂によると、今の日本の潜水艦戦力は、原潜であらずとも世界のトップクラスにあると言われている。

 

それだけでは、とても国の軍事力と言えないが、もし原潜があって核を搭載すれば?今では、現実に議論されてもおかしくない。漫画発表当時は、夢物語、ファンタジーですまされる感じもあった。

今でもまだ原子力、核というと拒絶反応する日本である。当然である。太平洋戦争では、2つも落とされた。戦後、潜水艦ではないが、日本でも「原子力船むつ」が建造、浸水されたが、放射能漏れ事故のため頓挫した。また東北大震災での福島の原発の事故、以前も「高速増殖炉もんじゅ」のナトリウム漏れの事故からの長年のドタバタの末の廃炉東海村JCO臨海事故など原子力については事故が起こる度に論議される。安全保障もからめると問題はさらに複雑になる。

 

「空母いぶき」も突っ込んだ作品だが、この「沈黙の艦隊」も今発表されても間違いなく注目される作品だと思う。

 

この漫画の中には、今リアルタイムで議論をしなければならない話題がたくさんある。そしてその中心に「やまと」という言葉がある。言霊の国に住む私達は、その響きに反応しないわけがない。国家防衛の問題も避けて通れない。これは、沈黙だけでは解決できない問題。混沌とする日本社会、そして世界情勢である。再読してみたいと思う。

 

全く最後まで、介護と関係なかった。(泣)

 

相手が見えないという所から、ハンデキャップ論議、介護の話題となるはずだったが、今日はギブアップ。とりあえず沈黙する。